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八重巻酒店

ひと昔前は田園が広がっていた森田地区。福井市中心部から九頭竜川を越えた市境にあり、現在は人口増加が顕著な地域となっている。地区の中心には少しの商店や事業所、スーパーなどがあり、その一角にある森田駅は福井駅の隣駅で、県中心部での就業や買い物にとっては非常に利便性が高い。新幹線開通を2024年春に控えた福井ではJR在来線が地元に移管され、より地域交通の要となることが見込まれる。その森田駅の出口から真っすぐ50m行き、昭和23年福井地震における犠牲者慰霊の震災観音堂の隣地が本計画地となりました。

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依頼内容

八重巻酒店は森田地区で酒販を営んでおり、現在は4代目が切盛りしている。以前は計画地より300mほど離れたスーパーに隣接していたが、老朽化した建物と地区の将来性を考えて、従来の酒販に加えて角打ちを営むことで、更なる地域密着型の事業展開を計画しました。

アイデア

工場や住宅が広がるなかの細長い敷地に、手前は平屋、奥は2階建ての切妻とし、観音堂や街への圧迫感を低減している。ゾーニングは「酒販」、「角打ち」、「倉庫(住居)」の3つの用途を道路側から並べ、その間にポリカーボネイトによる引分戸で全開放できる半外部的な土間を設けることで互いの緩衝地帯とし、それぞれの機能を相乗、補完する役割を果たす。
内部空間は敷地の特徴を生かし、敷地北端の最深部まで見通せ、各機能の諸室を貫く直線状の動線を確保。内部の仕上げは単調なものとし、酒瓶や酔客が空間に彩を与えるものとした。

価値

更新されていく街並みのなかで、歴史の重みを感じさせる伝承・鎮魂施設である観音堂と軒を並べて隣合った軒下は、建築内部を通らずに各用途までのアプローチを可能にしている。その旧街区の路地のような空間は、幹線で構成された単調な駅前空間に少しの遊びを持たせ、今宵も奥へと人々を誘っています。

施工:松栄建設㈱
写真:Tomomi Takano

3つの機能をつなぐ2つの土間空間

観音堂と軒を突合せ、奥へと誘う

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