北前船の寄港地としてのまちなみが今も残る三国湊にオープンしたアルベルゴ・ディフューゾ※「オーベルジュほまち三國湊」のレストラン棟です。NTT西日本や住友林業、熊谷組をはじめとするグローバルに活躍する企業が、地域創生を掲げ「アクティベースふくい」を立ち上げました。今後、アクティベースふくいは三国湊において滞在型観光拠点整備事業を通じての「魅力ある地域づくり」を進めます。私たちはローカルアーキテクトとして、レストラン棟の設計業務と宿泊棟整備へのアドバイザリー業務を担当、新事業の立ち上げに貢献しました。
※アルベルゴ・ディフューゾ:地域全体をホテルにみたてた分散型ホテル
オーベルジュほまち三國湊公式HP
レストラン棟のシェフには、フランス料理界のスターである吉野建氏が招聘されました。地域全体でゲストをおもてなしすることや、古民家を改修した料飲施設でフレンチを提供すること。これらは既に国内外で大きな成功を収める吉野シェフにとっても大きな挑戦でした。そこで「タテルヨシノ三國湊」の名を冠するこの施設には、シェフの未来、フレンチの未来、地域の未来までをも拓く空間の創造が求められました。
通りに面した平入のミセのボリュームに切妻の主屋が続き、セドとよばれる中庭をはさんで土蔵が建つ、三国特有の町屋の形式である「かぐら建」。「タテルヨシノ三國湊」として蘇るべく選定された古民家には、この「かぐら建」の特徴が残っていました。
タテルヨシノ三國湊に相応しい空間を創出するため、かぐら建の魅力を追及すること、そして相応しいラグジュアリーな空間のあり方を考えました。構造体が健全な状態で残っていた土蔵部では、古材の露出、陰影に富むライティング、調度品による装飾といった表現手法により日本的なラグジュアリーを演出しました。一方、構造体の劣化・損傷が大きく、大掛かりな改修を要する主屋は別の表現を考えることが必要でした。そこでオーセンティックなフレンチレストランがもつラグジュアリーのあり方を参照しました。明るく開放的な空間の中で、時間、交流を他者と共有することで得られるラグジュアリー。これを演出するため、二階の床や、間仕切りは取り去り、空間のプロポーションや視線、光、ゲスト間の距離を細やかに調整しながら空間を再生しました。
外観はかぐら建の形式を保存し、北前船の寄港地である三国湊の記憶を継承しています。通りに面した大開口は庇とドレープにより重層的に設えることで、ゲストが食事を楽しむ環境を構築しつつ、レストランの雰囲気を通りに滲ませ、まちに潤いを与えています。
「日本的なラグジュアリー」と「オーセンティックなフレンチレストランがもつラグジュアリー」による空間の演出と、三国湊の記憶の継承。このデザインの実践により、タテルヨシノ三國湊とオーベルジュほまち三國湊に相応しい、未来を拓き、魅力ある地域づくりに貢献する建築をつくることができました。
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