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エーテルの下で

人口減、少子化の社会において、大規模な区画整理によって田園地帯から新興住宅街となり、人口流入で子どもの増加により中学校が新設される森田地区。九頭竜川を越える新幹線高架とそれを挟む片側2車線道路が南北を縦貫し、森田駅から国道へとつながる直線状の幹線が東西を横断する。その2つの主要交通網の交差点に位置する本敷地は、準工業地域に隣接する一種中高層住居地域にあり、その土地の特性ゆえに東側隣地はコンビニエンスストアとなった。既に西と北の隣地に住宅ができている敷地の南側には常時、車の往来があり、目の前の巾約2mの歩道は通学路として小学生が集団登校し、通勤通学に徒歩や自転車で利用されている。そのような開放性に対してネガティブな要素しかない敷地は南北に狭く東西に長く、緩衝地帯となる庭を設けることもできなかった。

依頼内容

友人に紹介して頂いた施主ご家族は「浴槽いらない、寝室いらない、キッチンも大していらない、こどもの個室もいらない、植栽もいらない」と「一般的な暮らし」を描いておらず、建築に住まう上での丁寧な読み解きは不要で、生きるための『大きなストーリー』が必要との考えにいたりました。
そのような計画のもと着工し、主屋ができてくるなかで突如、施主から東隣地の一部を購入し、予定していた小さな倉庫・駐車スペースではなく倉庫棟をつくる計画がもたらされた。

アイデア

提案したのは生活の基本となる1階には開口部を持たず、2階を大きな光だまり=『エーテル』とし、その下で暮らしを展開すること。居室という概念をなくして南北を1間、2間、1間。東西を3間、3間、3間で分割し、中心の南北4間x東西3間を「ガーデン」と位置づけ、全周をガラスと杉ルーバーで囲まれた2階を1間グリッドの構造体で構成し、ロフトを設けました。
工事途中で計画の変更となった倉庫棟は、北側隣家の横をすり抜け、北側道路にも通じる形状となった敷地に2室をもつ。主屋とのバランスを考え、2層分の気積をもつ室を主屋側に、南北に開口を設けた室を東側に設けています。

価値

交通による喧騒のなか、1階を閉ざして2階に『エーテル』をのせた端正な外観の建築は新興住宅街に不思議な内部空間をもたらしている。『エーテルの下』では、私たち設計者も考えつかない創造的な暮らしが施主ご家族によって展開されているだろう。

施工:(有)海道建築
写真:Tomomi Takano

幹線道路沿いのため1階を閉じています。

連続した水廻りのなかのシャワー室

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