北前船の寄港地として栄え、文化が花咲いた三國湊。その情緒ある面影を残していく為に、使われなくなった町家を一棟貸し宿として活用していくプロジェクト。事業主の小針様の出身地である三国町安島の方言「んだこ」は「我が家」を意味します。この三國湊の風土を感じながら、在りし日の生活を体験できるようにという想い。
んだこWEBサイト http://www.ndako.jp/
場所は坂井市三国町、「湊町地区特定景観計画区域」に位置する築150年以上の“かぐら建て”の古民家。「きたまえ通り(街道)」と「かもめ通り(川側)」に挟まれ、それをつなぐ笏谷石の通り土間、街道沿いの広い土間(ミセノマ)を有し、廻船問屋の店の様相を呈していました。宿泊用途部の床面積は約170㎡で一棟貸し宿としては比較的大きいため、改修範囲と方法を精査してコストコントロールしながら建物の特徴を残すことに。
三国町の観光業に携わっておられた小針様の経験と人脈を活かした、湊で暮らすように滞在できる宿を計画。
当社はコンサルティング業務として事業計画の御手伝いと建築計画を行っています。
施設としてのアメニティを高めるために水廻りを刷新し、キッチン・ダイニング・リビングの一体的な利用を可能とする為に通り土間にはガラス床を設置。既存部分は極力、補修程度にとどめることで昔の面影を残しています。
街道に面した土間は地域に解放しており、在りし日の湊町の風景のように宿泊者や地域住民の交流が育まれます。
家具等のFFEセレクトも当社でお手伝い。
歴史的景観を守っていくには、その要素である建造物を単なる「保全」だけでなく、立地環境や規模、風土に応じた「利活用」が必要。その上で本プロジェクトは、既存間取りを活かした一棟貸し宿としての商業的活用と、交流スペースとしての公共的活用を選択し、相互に付加価値を与える要素を組合わせています。
事業主である小針様の三国愛と人柄により実現したプロジェクト。この「んだこ」は三國湊の未来に大きな役割を果たします。
施工:石丸ハウスセンター
協力:PTP
グラフィックデザイン:淵上 恵美子
WEBデザイン:Satomi Arai
写真:Tomomi Takano
かもめ通り沿いの船着場
改修前/笏谷石の通り土間