越前市には打刃物の拠点が2か所。ひとつは田園風景のなかにある味真野のタケフナイフビレッジで、もうひとつは大小の多様な工場がある池ノ上工業団地。全国でも数少ない和包丁の柄をつくる会社、山謙木工所は、その小規模な工場が並ぶ殺伐とした一角にあります。
外部は工業的素材と自然素材を組合せた姿をまとい、2枚の深い屋根によってガラスに包まれた内部を守ります。内部はグレーのトーンで統一。美しい越前打刃物や漆芸品が映える様な素材や色を選び、建築との相互補完を実現。
柄と繪WEBサイト https://etoe2020.com/
4代目にあたる現社長からの依頼。代々、木工に関わる仕事をしてきたが、それぞれの時代に応じた製品をつくり続けてきた山謙木工所。蒔絵師の伴侶とともに新しい事業展開として「包丁と漆芸」のギャラリーを望まれた。
機能としては、完成品である越前打刃物の展示空間と漆芸の工房、打合せ室と材料倉庫。
周囲は金属系の工場による非常にドライな景観。敷地の目の前は切土によってうまれた雑草地の斜面。ここに伝統産業を担う木工品と漆芸を扱う建築として、ガルバリウム素地の小波葺屋根と弁柄色の杉材外壁による落着きを持ちながらも華やかな拠点を整備。
最初に行った工場や倉庫、事務室などの調査・見学のなかで目についたのが、材料であるパーツの乾燥保管。一般的に材料倉庫は見えないようにすることが常であるが、ここでは、製品と表裏に配置し、2階の打合せ室とともにガラスとシャッターで囲まれた空間としています。
企業ブランディングとして、製品だけではなく、その背景を知ってもらう事が大事。製品の成立ちや企業の活動と姿勢がみえる建築です。
施工は大須賀技建さん。特殊な組み方をしている難しい構造でしたが、檜の素晴らしい材料と腕の良い職人さんにより完成。
造園は東造園さん。村上大理石さんに積みあがっていた端材を素敵に施工。
今回、Webサイトやパンフなどの制作も当社で請けました。
PRデザインチーム
WEBデザイン:デザイン・インプルーブメント
グラフィックデザイン:SEWI
ライター:編集室ふたこぶ
写真:Tomomi Takano
製品化される前の乾燥保管
下屋の片持ち構造